COLUMN

2025.02.02

療養型病院とは?入院条件や費用を解説

療養型病院とは、慢性期の患者や医療ケアを必要とする方が長期入院するための施設です。

本記事では療養型病院の入院条件や費用、特徴について詳しくご紹介します。
さらに、療養型病院と混同されやすい「介護医療院」との違いもわかりやすく解説します。

療養型病院とは?

療養型病院とは、慢性期の患者や日常的に医療ケアを必要とする方を対象に、看護や介護、リハビリテーションなどを行うための「療養病床」を備えた病院です。

療養型病院は「医療」の提供をメインとしていることや、混同されやすい介護医療院と区別するために「医療療養病床」とも呼ばれます。

療養型病院の定義

厚生労働省によると、“療養病床は、病院又は診療所の病床のうち、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるもの。”とされています。
療養病床は、医療保険の『医療療養病床(医療保険財源)』と、介護保険の『介護療養病床(介護保険財源)』2つに分けられます。

【参考】厚生労働省|療養病床の概要

ここからは、医療保険を財源としている療養型病院(医療療養病床)について解説していきます。

入所対象者

療養型病院では、病状が安定してきた慢性期の患者や、日常的な医療ケアを必要とする方(在宅での生活が困難である方)を入所対象としています。

2006年から導入された医療区分に基づき入所対象者を決定します。
(病院の空き状況にもよりますが、医療の必要性が高い医療区分23の方を優先的に受け入れる仕組みです。)

療養型病院では、医療法施行規則に基づき、患者4名に対して看護師・看護補助者が1名以上配置されます。

【参考】厚生労働省|医療区分

【参考】厚生労働省|医療療養病床(201251)と介護療養病床との比較

 

入院期間

入院期間は、急性期(病気になり始め)の患者が入院する一般病床と比較して長期となることが多く、36ヶ月間が目安です。
「看取り・ターミナルケアの場」として機能していることもあり、入院患者のおよそ5割が亡くなったことを理由に退院しているということも特徴です。

※看取り=積極的な治療をせず、患者が自分らしく最期を迎えられるようにケアすること。
※ターミナルケア=身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減する終末期医療のこと。

【参考】厚生労働省|(1)介護医療院におけるサービス提供実態等に関する調査研究事業

病院によっては予め3カ月、6カ月と期間を設定している事もあるため、病院選びの際には入院期間も事前に確認しておきましょう。

療養型病院の提供するサービス

療養型病院で提供するサービスは以下の通りです。

医療ケア

療養型病院では、点滴・注射・採血などの医療処置をはじめ、胃ろう、たん吸引、酸素投与、中心静脈栄養、褥瘡処置などの医療ケアが24時間体制で受けられます。
夜間や休日にも対応しています。

リハビリテーション

療養型病院では、看護師や理学療法士、作業療法士の指導の元、リハビリテーションを受けることができます。

日常生活の質を向上させるため、例のように、患者一人ひとりの状態や目的に合わせたリハビリを実施しています。

例)
・呼吸機能の改善
・歩行機能の改善
・嚥下機能の改善
・会話力の向上 など

生活支援サービス

療養型病院では、食事・排泄・入浴の介助やおむつ交換、褥瘡防止のための体位交換・シーツ交換をはじめ、患者の日常生活全般の支援を行っています。

ただし、介護施設のように洗濯や掃除・買い物代行など、医療ケア以外のサービスは積極的に行われていません。
※病院により、買い物や散髪などを依頼できる場合もあります。
必要性が高いと予想される場合は事前に確認してみましょう。

療養型病院の費用と支払い方法

療養型病院の費用についてまとめました。

費用の内訳

療養型病院の入院費用の相場は、月額10万~20万円程となります。
個人の症状やADL区分(身体機能による医療区分)、所得等によって費用が変動します。

▼療養型病院 入院費用相場/月

医療区分①医療区分②医療区分③
入院費約24,000〜30,000円約37,000円〜42,500円約44,000円〜54,500円
食費約9,000円〜41,500円
※所得により変動します
居住費約0円〜11,500円
※所得により変動します
その他自己負担費用約15,000円〜50,000円
合計約48,000〜133,000円約61,000〜145,500円約68,000〜157,500円

医療費・食費・住居費以外には医療保険が適用されないため、以下のようなものは全て自己負担となります。
《自己負担となる物の例/1ヶ月あたりの目安》
・おむつや尿取りパッド等30,000
・病衣やタオル代10,000円~15,000
・テレビカード5,00010,000
・個室(希望する場合)30,000

※これらの費用は個々の病状や施設によって大きく変動します。
上記の金額はあくまで参考としてご確認ください。

高額療養費制度の利用

療養型病院を利用する際は「高額療養費制度」を活用することで、費用負担を軽減できます。

《高額療養費制度とは?》
保険適用される診療に対して一月あたりの上限額を設け、上限額を超えた医療費の差額分を、後ほど払い戻してもらえるという仕組みです。

病院窓口で費用を全て支払った後に、自身が加入している公的医療保険に、「高額療養費支給申請書」を提出(または郵送)して返還されるという流れになります。

加入の医療保険によっては支給対象であることを通知してくれたり、自動的に高額療養費を口座に振り込んでくれたりするケースもありますが、基本的には各自で申請する必要があるため忘れないようにしましょう。

また、事前手続きで受け取れる「限度額適用認定証」を病院窓口に提示することで、超過分の支払いを免除することも可能です。
窓口での全額支払いが難しい場合は「限度額適用認定証」の発行手続きを保険者へ依頼しましょう。

《特徴》
・年齢や所得によって上限額が決定します。
・医療保険サービスのみに適用される。(食費やおむつ代などの自己負担分は適用外)
・同月内に支払った医療費は、複数の病院でも合算して申請できます。
・差額分が払い戻しされるまでに該当月から3か月程度かかります。
・2年前まで遡って申請が可能です。(権利の消滅時効は、診療月の翌月の初日から2年)

【参考】厚生労働省|高額医療費制度を利用される皆さまへ

介護医療院との違い

療養を目的とした施設には療養型病院の他に、「介護医療院」もあります。

ここでは、介護医療院の特徴や療養型病院との違いについてご紹介します。

介護医療院の定義

介護医療院は「介護保険」を財源とした施設です。

厚生労働省により、介護医療院は以下のように定義されています。

“介護医療院とは、要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設。”
(介護保険法第8条第29項)

【引用】厚生労働省|介護医療院の概要

つまり介護医療院とは、「要介護者」かつ一般的な高齢者向け施設では対応が難しい、医療ケアの必要性が高い方が、長期にわたって療養生活を送るための施設を指します。

介護医療院では、医師の配置が義務付けられているため、医療ケアの提供が可能です。

介護医療院は入居者の状態に応じて、Ⅰ型とⅡ型に施設の形態が分けられています。

Ⅰ型施設(介護療養病床に相当)重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者等が対象
Ⅱ型施設(老健施設以上に相当)Ⅰ型と比較して、容体が比較的安定した者が対象

従来、介護分野における療養病床は「介護療養型医療施設」の一部として提供されていましたが、医療の必要性が高い患者と低い患者が混在していたため、2024年3月末をもって廃止されました。

これにより、患者一人ひとりの状態に応じた、より質の高い医療と介護を提供することを目的に、現在の「介護医療院」へと移行しています。

【参考】厚生労働省|介護医療院公式サイト

入所条件と提供サービスの違い

介護医療院と療養型病院では、入所条件やサービスに違いがあります。
施設によってはさらに細かい点での違いがありますが、以下の表では大まかに2つの施設の違いをまとめています。

▼介護医療院と療養型病院のおおまかな違い

介護医療院療養型病院
設置根拠介護保険法医療法
入所条件・介護保険被保険者
・65歳以上
・要介護認定者(要介護1〜5)
※40〜64歳の方は特定疾病による要介護認定を受けていれば、入居対象となる。
・医療保険制度に基づく
・年齢制限無し(高齢者だけではなく小児や成人も入院可能)
入院期間無期限3ヶ月間〜6ヶ月間程度
提供サービス・24 時体制の介護・医療ケア【Ⅰ型】
・日中メインの介護・医療ケア【Ⅱ型】
・季節行事やレクリエーション、ボランティアとの交流などイベントを積極的に開催。
・24 時間体制の医療ケアやリハビリが中心
・看取り期の患者も受け入れ可能
人員基準【Ⅰ型】
・医師…48:1(施設で 3 名以上)
・看護職員…6:1
・介護職員…5:1

【Ⅱ型】
・医師…100:1(施設で 1 名以上)
・看護職員…6:1
・介護職員…6:1
・医師…48:1(施設で 3 名以上)
・看護職員…4:1
・介護職員…4:1

医療的ケアの必要性から、介護職員<看護職員という配置であることが多い。

介護医療院は、従来の病院における「治療の場」ではなく、長期にわたって生活する「住まいの場」としての要件が課されており、レクリエーションルームや談話室などがあったり、体操やゲームもおこなっていたりするという特徴があります。

また、プライバシーに配慮して個人のスペースにはカーテンでは無くパーティションを設けることが義務化されるなど、療養型病院とは細かい点で違いがあります。

療養型病院のメリットとデメリット

療養型病院のメリット・デメリットについてまとめました。

メリット

・費用の負担が比較的軽い
入院の際に一時金などの初期費用が不要であり、高額療養費制度を利用することもできるなど、有料老人ホームや一般病院よりも経済的負担が比較的軽いと言えます。

・手厚い医療サポート
慢性疾患や長期療養が必要な患者にとって、安心できる医療体制が整えられています。
万が一容体が悪化しても迅速な対応が可能です。

・リハビリの充実
専門的なリハビリ知識を持つ理学療法士や作業療法士による機能訓練をはじめ、患者の日常生活の自立度を高めるための支援が強化されています。

療養型病院は、医療ケアが常時必要な方や寝たきりの方が安心して暮らせる環境が整っているという点がメリットです。

デメリット

・入院期間は長くても半年ほど
終身利用が保証されておらず、症状が改善したタイミングで退院を促されるケースもあります。

・プライバシーの確保が難しい
他の介護施設と比較して、個々のプライバシーが十分に確保されていない場合があります。

・娯楽・社会活動の機会が少ない
医療ケアが中心の施設となるため、季節行事やイベントなどは基本的にありません。
患者が外部との交流や楽しみを持つ機会が少ないことがあります。

療養型病院では「病院」としての側面が強いということもあり、一般的な老人ホーム等と比較して、精神的な充実感を追求しづらい点がデメリットと言えます。

療養型病院の選び方

療養型病院の選び方のポイントや注意点についてまとめました。

選び方のポイント

療養型病院を選ぶ際には、以下のポイントを確認しましょう。
これらは一般的な老人ホームに入所する際にも重視されているポイントでもあります。

・入院可能な期間
・職員の対応や雰囲気が良いか
・容態が悪化した場合の対応について
・病衣のリース料(リース料は実費かつ病院によって異なります)
・お部屋の環境(個室は別料金となるケースがほとんどです)

注意点

療養型病院を選ぶ際には、さらに以下の点についても確認することが重要です。

・併設病院の評判
⇒療養型病院は一般病棟に併設されているケースが多いため、病院の評判を確認しておくことも大切です。

・内服薬の量や栄養管理方法について
⇒医師の判断が基本ですが、病院側の都合だけで内容を変更されることが無いか注視しておくようにしましょう。

・リハビリの頻度
⇒スタッフの人数が足りていないような施設では、リハビリの頻度が低くなってしまうこともあります。

まとめ

療養型病院は、慢性期の患者や医療ケアを必要とする方が長期入院するための施設です。

療養病床には、医療保険の「医療療養病床や介護保険の「介護医療院」など、様々な選択肢があります。

それぞれの施設には、入院条件や費用、入院可能期間などの違いがあります。
しかし、最も重要なのは入院する方にとって一番重視すべきものは何なのか?をしっかり考慮するということです。
本記事を参考に、家族が安心して暮らせる施設を探してみましょう。

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