COLUMN

2025.05.14

電子カルテを運用する方法とは?メリット・デメリットも解説

電子カルテは、医療業務の効率化や医療の質向上に大きく貢献するシステムです。
効果的に運用することで、患者情報の管理や共有がスムーズに行え、迅速かつ適切な診断・治療が可能となります。

しかし、実際には多くの施設が未だ切り替えに踏み切れていないのが現状です。
その背景には、電子カルテの運用方法に対する不安や疑問があると考えられます。

そこで本記事では、「何から始めればよいのか」「どのように電子カルテを選べばいいのか」といった不安や疑問を解消すべく、電子カルテの基礎知識から運用方法、メリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。

2025年度には「電子カルテ情報共有サービス」の開始が予定されており、それに伴い、すべての医療機関に対して電子カルテの早期導入が求められています。

いざという時に慌てないよう、電子カルテの運用に関して、早めに知識を深めておきましょう。

電子カルテの基礎知識

電子カルテを効果的に運用することで、患者情報の共有がスムーズに行えるようになり、医療業務の効率化や医療サービスの質向上に寄与します。

現在は、国が推進する医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の中心的な取り組みとして、電子カルテの早期導入が全国の医療機関に呼びかけられており、今後は一層、医療業界のデジタル化が進展していく運びとなっています。

より良い医療提供を実現するために、まず電子カルテとはどのようなものなのか、基礎知識を身につけておくことが求められます。

電子カルテとは

電子カルテは、パソコンやタブレットなどの端末を用いて、患者の診療情報をデジタル形式で記録・管理するシステムです。

《特徴》
1. 診察内容や検査結果、処方情報などが一元的に管理されるため、紙のカルテのように書類を管理する必要がなくなります。

2. 各部署に配置された端末を利用して、情報の検索、共有、保存ができ、必要なデータに即アクセスできるため、日々の業務効率が大きく向上します。

3. スタッフ間の情報共有がスムーズに行えることで院内全体の連携強化が進み、結果としてより良い医療サービスの提供が可能になります。

4. 電子カルテはデータを基にした評価や分析が容易で、医療の質向上にも大いに役立ちます。

《なぜ今、電子カルテが必要なのか?》
今後ますます進展していくと予想される「高齢化社会」に対応するためには、より効率的で質の高い医療提供体制の構築が不可欠です。
加えて、医療業界における慢性的な人手不足を解消し、医療従事者の負担を軽減するための取り組みも急務となっています。

これらの課題を解決するためには、まず電子カルテを活用して患者情報を効率よく管理・共有することが必要と考えられており、現在、2030年度を目標に全医療機関での電子カルテ導入完了が推奨されています。

電子カルテの種類とは

電子カルテは、大きく以下の3種類に分類されます。
・オンプレミス型
・クラウド型
・ハイブリッド型

それぞれの特徴を十分に理解した上で、最適な電子カルテを選定しましょう。

・オンプレミス型
オンプレミス型電子カルテは、院内に設置した専用サーバーにデータを保存するタイプの電子カルテです。

《メリット》
オンプレミス型は、パソコンや周辺機器が一括で手配され、定期的な保守点検を受けることができるなど、ベンダーのサポートが手厚いのが特徴です。
病院のニーズに合わせて電子カルテをカスタマイズしやすいのも大きな特徴です。

また、院内サーバーでの運用となるためネットワークトラブルに影響されない、外部攻撃によるデータ漏洩のリスクが低いという点においても魅力があります。

《デメリット》
初期導入費用や維持費が高額であること、設置場所を確保する必要があることがデメリットです。
サーバー管理や更新の手間、耐用年数に応じて機器の買い替えも必要となるため、それらに手間をかけられない場合やコストを抑えたい場合は、他タイプの電子カルテを検討しましょう。

・クラウド型
クラウド型電子カルテは、ベンダーのサーバーにデータを保存するタイプの電子カルテです。
院内にサーバーを設置する必要がない代わりに、利用の際はインターネット接続が必須となります。
一般的には、サブスクリプション契約に基づき、月々の利用料をベンダーに支払う形になります。

《メリット》
サーバーを設置する必要がないため、初期費用やサーバの買い替えが不要であり、オンプレミス型よりも低コストで利用できるという特徴があります。

《デメリット》
インターネットが利用できない場所では使用できない点、ネットワークトラブルに弱い点がデメリットです。
トラブル発生時に適切なサポートが受けられるのか、あらかじめよく確認しておく事が重要です。

・ハイブリッド型
オンプレミス型とクラウド型、双方のメリットを合わせ持つ電子カルテは、ハイブリッド型電子カルテと呼ばれています。

インターネットと院内サーバーのどちらを経由しても電子カルテを利用でき、医療機関の状況に応じた使い分けができます。

《メリット》
院内で使用する場合はサーバーを経由し、院外で利用する場合はインターネットを経由するなど、使用方法を柔軟に使い分けることができます。

ネットワークにトラブルが発生した場合でも、院内サーバーに切り替えて使用を続けることができるため、業務に支障をきたすリスクを最小限に抑えることができます。

《デメリット》
オンプレミス型同様に、院内にサーバーを設置する必要があり、初期導入費用や維持費用が高額になります。
スペースの確保や、サーバー更新の手間も増えるため物理的な負担も伴います。

加えて、インターネット上のサーバーにデータを保存することから適切なセキュリティ対策も求められます。

【2025年】電子カルテ情報共有サービスの開始

2025年から電子カルテ情報共有サービスが段階的に開始予定であり、各関係機関では本サービスに接続するための環境整備が急務となっています。

■電子カルテ情報共有サービスとは?
全国の医療機関や薬局で患者の電子カルテ情報を共有し、効果的に活用するための仕組みです。

全国で患者情報の共有が可能となり、特に地域医療の連携が進むことで、患者の状態に応じた迅速な対応が実現できると見込まれています。
また、情報の共有により重複検査の削減や医療費の抑制効果も期待されており、医療関係者だけでなく患者にとっても大きなメリットがある施策となっています。

【参考】電子カルテ情報共有サービスのメリットと導入方法|ウェブカルテ

電子カルテ導入のメリットとデメリット

電子カルテを導入のメリットとデメリットについてまとめました。

電子カルテのメリット

電子カルテは、医療スタッフと患者の両方に多くのメリットをもたらします。

1. 業務効率化
紙カルテに比べて、情報の検索や入力が迅速に行えるため、受付~診療~会計までの待ち時間が短縮されます。

2. データの一元管理
患者の検査結果や過去の診療履歴が簡単に確認でき、医療スタッフ間で情報を素早く共有できます。

3. 保存性の向上
紙カルテに比べて電子データは紛失や劣化のリスクが低く、安全に長期間保存することが可能です。

4. ペーパーレス化できる
ペーパーレス化が進むことで、医療現場の業務効率が向上します。
手書きのシーンを減らせることで記載ミス、読み間違いなどのヒューマンエラー減少にも貢献します。

電子カルテのデメリット

電子カルテは得られるメリットが多い一方で、いくつかのデメリットもあります。

1. 高い導入・運用コスト
電子カルテを使うためには、初期投資やシステムの維持管理費を負担しなくてはなりません。
中小規模の医療機関にとって電子カルテの導入はコスト面で大きな負担となる場合があります。

 

2. システムトラブルのリスク
電子カルテのシステムがダウンすると、診療に大きな影響を与える可能性があります。
万全なバックアップ体制を整え、さらにデータの消失や漏洩のリスクにも備える必要があり、この点は紙カルテよりも面倒と感じられるかもしれません。

 

3. 操作習熟に時間がかかる
医療従事者が新しいシステムの操作に慣れるまで、研修やサポートの期間が必要です。
一時的に業務に混乱を招く可能性もあり、病院にとって負担と感じることもあります。

 

しかしながら、電子カルテの導入にはデメリットを上回る多くのメリットがあります。
導入時には、技術面や操作面から負担を感じる場面もあるかもしれませんが、日々運用していくことで操作にも慣れ、ストレスも軽減されていきます。
これらのデメリットも考慮し、適切な対策を講じながら電子カルテの導入・運用を進めていきましょう。

ストレスなく電子カルテを運用していくためのポイント

電子カルテは業務効率化に役立つ大変便利なツールです。
しかし、今まで紙カルテを使っていた方や、デジタル端末の操作が苦手な方は、電子カルテの扱いにストレスを感じることもあります。

 

ストレスなく電子カルテを運用するには、以下の対策が有効です。

 

・システムの操作に関する教育を徹底する
・日常的なサポート体制や相談窓口を整える
・現場のニーズに合わせシステムを使いやすくカスタマイズする

 

これらのポイントを意識することで、より快適に運用していくことができるでしょう。

【参考】電子カルテについていけない人のための対策ガイド|ウェブカルテ

電子カルテ導入から運用までの流れ

ここからは、電子カルテの導入~運用までの流れを4つのステップに分けて、それぞれ解説していきます。

ステップ1: 導入計画の策定

電子カルテ導入の第一歩は、導入計画を策定することです。
計画段階で十分に議論し、全体像を明確にすることで、後の段階でのトラブルを防ぐことができます。

 

・医療機関のニーズや目標を明確にする
    電子カルテ導入の目的や期待する効果を整理します。
    また、現行の業務フローを確認して、どのような機能が必要なのか確認しておきましょう。

 

・導入コスト、スケジュール、必要なリソースを見積もる
    コストに関しては初期投資だけでなく、運用維持にかかる費用も考慮する必要があります。
    また、スタッフが操作に慣れるまでのサポート体制や、メンテナンスの計画も含めて包括的な導入計画を策定します。

ステップ2: システムの選定と導入

次に、システムの選定を行います。
市場には様々なタイプの製品があるため、必ず自施設の業務内容に適したシステムを選ぶことが重要です。
こちらの要望をしっかりと伝えた上で、さらに疑問点や不明点についてもよく確認するなど、ベンダーと密にコミュニケーションを取り、進めていきましょう。

 

選定時には、使いやすさ、機能の充実度、コスト、サポート体制など、各システムの特徴をしっかり比較検討を行います。
必要に応じて、システムのカスタマイズも検討しましょう。

 

システムが決定したら、サーバー設備やネットワーク環境、周辺機器等を整えます。

ステップ3: テスト運用とスタッフのトレーニング

システムのインストール後は、テスト運用を実施します。
テスト運用によりシステムが正しく機能するかを確認し、不具合があれば早期に修正します。

 

並行して、スタッフがシステムを使いこなせるように、実践的な操作方法やトラブルシューティングについてのトレーニングを行います。
トレーニングはできれば複数回に分けて行い、システムの習熟度を高めていきましょう。

 

また、以後定期的なフォローアップを実施して、継続的にスタッフのスキル向上を図ることで、電子カルテのメリットを最大限に引き出す効果が期待できます。

ステップ4: 運用開始

運用の開始にあたって、まずは全スタッフがシステムを充分に理解しているか確認することが重要です。
問題がなければ、いよいよ電子カルテの本格運用を開始します。

 

運用開始直後は特にトラブルが発生しやすいため、サポート体制を強化し、問題が発生した際には迅速に対応できる体制を整えておくことが求められます。

 

運用後は定期的に使用状況を見直し、スタッフからのフィードバックを収集しましょう。
改善点があれば適宜改善策を講じて、より良い運用を目指していくことが大切です。

電子カルテ運用時の注意点

ここからは、電子カルテの運用に関する注意点をご紹介します。

セキュリティ対策を必ず行う

電子カルテは紙カルテと異なり、電子カルテは端末があればどこからでも患者情報を閲覧できるため、不正アクセスや情報漏洩といったリスクは免れません。

 

これらのリスクを低くするためには、職員ごとに適切なアクセス権限を設定し、必要な情報だけにアクセスを許可することが重要です。
さらに、日々の運用においては、パスワードの定期的な変更や、機密情報を外部メディアに保存しないといった基本的なセキュリティ対策を徹底する必要があります。

 

また、医療スタッフにはセキュリティ意識やモラルの向上を促し、全員がセキュリティ対策の重要性を理解することが求められます。

 

特に、クラウド型電子カルテを使用する場合、外部からの不正アクセスやウイルス感染のリスクが高まるため、セキュリティソフトの導入や信頼性の高いネットワーク機器の選定、端末側のセキュリティ強化が重要です。

 

加えて、定期的なシステムのアップデートや監査を行い、最新の脅威に対応できる体制作りも求められます。

運用ポリシーを策定する

電子カルテを適切に運用するためには、システムの利用方法や管理方法、責任者の役割、などを明確に定義した「運用ポリシー(運用管理規定)」の策定が必要です。

 

電子カルテの導入から運用、運用後の管理に至るまでの一連のプロセスを網羅した内容で構成されており、これらの内容をスタッフ全体が理解し、実行していくことが求められます。

 

また、上記に加えて電子カルテの利用目的や利用者の範囲、利用上の注意点、情報セキュリティに関する規定、そして緊急時の対応なども合わせて記載します。

法改正に対応を行う

電子カルテの運用において、法改正への対応は非常に重要です。

 

例えば、個人情報保護法の改正に伴い、患者データの管理方法や利用目的の明確化が求められたケースでは、システムの設定変更や、業務プロセスの大幅な見直しが必要となりました。

 

特に医療関連の法規制は頻繁に変更されるため、常に最新の法令情報を把握し、適切に対応することが求められます。
定期的に法令に関するセミナーや研修に参加し、最新情報を学ぶことも検討しましょう。

まとめ

電子カルテの運用を適切に行うことで、医療業務の効率化はもちろん、患者へのサービス向上にも繋がります。

2025年度には「電子カルテ情報共有サービス」の本格稼働も予定されており、これを機に電子カルテへの切り替えを検討している医療機関も多いでしょう。

電子カルテの運用に際しては、まず導入計画をしっかりと策定し、その計画に基づいて自施設に適切なシステムを選定することが重要です。

合わせて、セキュリティ対策や運用ポリシーの策定、法改正への対応に注意を払うなど、患者の安全に配慮した運用が求められます。

また、電子カルテを導入後も継続して研修や意見交換を行い、システムへの理解を継続的に深めて行くことが大切です。
電子カルテのメリットを最大限引き出すために、チーム全体で改善を図りながら、より効果的な運用へと導いていきましょう。

今後はより一層、電子カルテの必要性が高まっていくことが予想されます。
より良い医療提供の実現に向け、できるだけ早期に電子カルテの運用を検討しましょう。

 

 

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