2025.06.11
看護記録簡素化で業務効率を改善!記録方法とポイント
看護記録は、医療チームとの情報共有や患者ケアの継続性を保つために欠かせないものです。
しかし、多くの労力と時間をかけて作成したとしても、単に情報を記入するだけでは見やすい看護記録とは言えません。
誰にでも分かりやすく、質の高い看護記録を効率良く作成するには、いくつかのコツと工夫が必要です。
そこで本記事では、看護記録の基本から、SOAPやDAR形式といった異なる記録形式の書き方、さらに効率的に質の高い看護記録を作成するための具体的なコツについて解説します。
日々の業務を少しでも楽に、さらにより良い医療を提供できるよう、看護記録を簡素化する方法を早速チェックしていきましょう。

看護記録の重要性
看護記録は、患者に提供したケアやその経過を日々記録するものです。
看護記録を活用することで、医療チームの全スタッフが患者一人ひとりの状態を正確に把握でき、適切なケアを提供するための情報共有が可能になります。
なお、近年ではチーム医療や多職種連携の重要性が増しており、看護記録を作成する際は「誰が見ても理解できる」「再現性がある」「法的信頼性がある」といった要素が求められています。
しかし一方で、「見やすい看護記録の作成方法がよくわからない」「そもそも何を書いてよいのか思いつかない」など、記録業務に大きな負担を感じている看護師も少なくありません。
実際に、看護ケアにかける時間よりも、記録業務に時間を取られてしまっているというケースも聞かれます。
このような状況を改善するためには、看護師の記録業務の負担を軽減し、医療業務の効率化を図ることが重要です。
質を保ちながら、効率的に看護記録を作成するための方法を確認しましょう。
看護記録とは?
看護記録とは、患者の状態や観察結果、実施した看護ケアや看護師の判断などを記録するものです。
この記録は、医師や他の看護師をはじめとする医療チームとの正確な情報共有に欠かせないものであり、看護の継続性や一貫性を支える重要な役割を果たします。
例えば、夜勤から日勤への引き継ぎ時などでは、看護記録を確認することで情報の伝達がスムーズになり、ケアの質が途切れることなく継続できます。
患者にとっても適切な看護記録があることで、安心して治療を受けることができるのです。
看護記録の目的
看護記録は単に「記録」だけが目的ではありません。
看護記録には、大きく3つの目的があります。
1. 医療チーム内での情報共有
看護記録は、患者の状態やケアの内容を医師や他の看護職、医療スタッフと正確に共有する手段です。
記録があることで、スタッフ間で状況を正しく把握でき、ケアの継続性や一貫性が保たれます。
2. 法的な証拠
万が一、医療事故やトラブルが起きた場合、看護記録は法的な証拠としての役割を持つ可能性があります。
記録が正しく残っていることで、看護師自身や医療従事者全体を守る手段になります。
3. 看護ケアの質の評価と改善
看護記録は「行動の記録」であると同時に、「成長のためのツール」でもあるのです。
記録を見返すことで、ケアの経過やその効果を振り返り、次にどう対応すべきかを考える材料になります。
また、定期的な見直しにより、看護の質を継続的に改善するための指標にもなります。
看護記録の書き方
看護記録の基本的な構成は、以下の5つの要素から成り立っています。
各項目にどのような内容を記録すればよいか見てみましょう。
1. 基礎情報(データベース)
基礎情報は、すべての看護計画や観察の土台となるため、正確かつ丁寧に記録することが非常に重要です。
病状だけでなく、仕事や家族構成や患者の日常生活に関する詳細な情報も含まれます。
【記入項目】
・プロフィール(氏名・年齢・性別、アレルギーの有無、仕事、家族構成など)
・主訴や既往歴
・生活習慣/日常生活の詳細
・使用中の薬剤
・身体・精神状態の概要
2. 看護問題リスト
続いて、患者が現在抱えている健康上の問題や、今後起こり得るリスクを明確にすることで、効果的な看護計画の立案や現場でのケアに活かします。
具体的かつ簡潔に問題点をリストアップし、優先順位をつけることが重要です。
「緊急性が高いか」「患者のQOLに直結するか」などを基準に、どの問題から対応すべきかを判断しましょう。
例)
・転倒リスクが高い
・食欲低下による栄養不足の懸念
・疼痛の訴えが強く、ADL(日常生活動作)」 に支障あり
・排泄の自立が困難 など
3. 看護計画
看護計画は、抽出した看護問題に対して、患者に「どのような状態になってほしいか」という目標と、それを達成するための具体的なケア内容を記録するものです。
◆ 目標の立て方
目標を記述する際は、看護師ではなく「患者」を主語にして表現します。
例)1回20分間、1日3回、食事時に端座位で過ごせる。
このように、患者の行動や状態が具体的にイメージできるように書くことがポイントです。
◆ ケア内容の記載方法
目標達成のためのケアは、以下の3つの視点から整理します。
① 観察計画(O-P:Observation Plan)
五感や検査などで得られる情報を観察・記録します。
例)バイタルサイン、血液検査データ、呼吸の様子、下痢・嘔吐の有無、睡眠状況など
② 援助計画(T-P:Therapeutic Plan)
実際に看護師が手を使って行うケアを記録します。
例)体位変換、トイレ介助、輸液の管理、清拭など
③ 教育計画(E-P)
患者本人や家族への説明、指導内容を記録します。
例)「介助が必要なときは遠慮せずにナースコールでお知らせください」
※認知機能や理解力に応じて、ご家族への説明に切り替える配慮も必要です。
◆ 説明と同意
看護計画を記録したあとは、患者さんやご家族に必要に応じて書面を提示し、内容を丁寧に説明したうえで同意を得ることが大切です。
これにより、ケアの透明性が保たれ、患者さんと看護師が同じ方向を向いてケアに取り組む土台が整います。
4. 経過記録
経過記録は、看護計画に基づき実施したケア内容と、患者さんの状態変化を時系列で記録するものです。
記載の際は「顔色が悪い」ではなく、「顔面蒼白」「皮膚冷感あり」と、事実を具体的に書くことが重要です。
【ポイント】
・誰が読んでも理解できるように、簡潔で明確な表現を心がける。
・医療用語や略語は正確に使用する。
・客観的事実と主観的判断を区別して記入する。
・異常値や重要な情報は、他のスタッフがすぐに気づけるように強調する。
・記録時間と記録者名を明記する(責任の所在が明確になる=法的な記録となる)
【記入項目】
・実施した看護ケアや処置の内容
・患者の反応(症状の変化、言動、表情など)
・バイタルサインや検査結果などの客観的データ
・医師の指示や他職種との連携内容
・患者・家族からの訴えや希望
5. 看護サマリー(要約)
看護サマリーは、患者の状態、治療経過、そして実施した看護ケアを総括する記録です。
次のケアプランや治療方針を立てる際の参考となるほか、退院や転棟、他施設への引き継ぎ時に看護ケアの継続性を確保するのに役立ちます。
なお、看護サマリーは施設や提出先によって書式が異なります。
そのため、専門用語や略語は避け、非医療従事者にも理解できるよう要点を整理して簡潔に記載することが大切です。
【記入項目】
患者の基本情報
入院時の症状や問題
実施した治療や看護ケア
患者の反応や経過
今後の課題や注意点
看護記録簡素化で記録時間短縮のメリット
看護記録を効率的に作成できるようになると、業務全体や患者ケア、スタッフの働きやすさに様々な良い影響を与えます。
ここでは、記録簡素化によって得られる主なメリットを3つご紹介します。
業務全体の効率化
看護師業務において、長時間労働は長年の課題となっていますが、その中でも特に看護記録の作成にかかる時間が、超過勤務の大部分を占めているのが現状です。
そのため、看護記録作成に費やす時間を削減することで、医療業務全体の効率化が期待できます。
記録の簡素化により、患者対応や申し送り、環境整備など、他の業務に余裕を持って取り組むことができることで、チーム全体の業務が円滑に回るようになります。
患者ケアの質向上
記録に追われて時間が足りなくなると、どうしてもケアの質にも影響が出てしまいます。
病棟によっては看護記録にかかる時間が、患者ケアに割ける時間を上回るケースもあるなど深刻な状況となっています。
記録が簡素化され、必要な情報を迅速に共有できることで素早く伝えられることで、患者一人ひとりにじっくり向き合う時間が増え、より丁寧なケアを提供できるようになると考えられます。
スタッフのストレス軽減
自由記載が多い看護記録では、アセスメント力や文章力といった個人の能力に大きく依存するため、看護師の負担が大きくなりがちです。
特に新人看護師は「何を書けばよいのか分からない」と感じ、記録に多くの時間を取られることがよくあります。
このような状況は、ストレスを引き起こし、業務に影響を与えることも少なくありません。
記録を簡素化し、チーム内で記録の書き方を統一することで迷いが減り、自信を持って記録を進められるようになります。
記録の書き方が統一されることで、記録を作成する看護師だけでなく、読む側の負担を減らす効果も期待できるなど、チーム内でのコミュニケーションを円滑にします。
形式別:看護記録の作成方法
看護記録にはいくつかの記録形式があります。
それぞれの形式にはメリット・デメリットがあり、施設の状況や目的に合わせて使い分けられています。
ここでは看護記録の作成方法を、代表的な4つの形式ごとにご紹介します。
SOAP(ソープ)形式
SOAP形式は、主観的情報(S)、客観的情報(O)、評価(A)、計画(P)の4つの要素に分けて記録する方法です。
思考の流れが整理されるため、問題を的確にとらえた記録が書きやすいのが特徴です。
・ S(Subjective):患者の主観的な訴え
例:「喉の痛みが強い。昨日から食欲がない」
看護師の解釈や感情は入れず、患者の発言やボディランゲージなどをそのまま記載します。
患者の発言以外にも、療養に関する内容であれば家族の訴えも記載します。
・ O(Objective):観察・測定した事実
例)
・聴診・触診・視診・内診などの所見
・血液検査の結果
・画像検査の結果 など
患者からの直接の訴え(S)以外の情報=医師の所見、数値データ、実施した看護介入などを客観的かつ具体的に記載します。
・ A(Assessment):SとOからの評価
例)急性上気道感染症(風邪)の疑いあり。
SとOに記載した情報を根拠として、現状の問題点や原因、看護目標の達成度、今後考えられるリスクなどを分析します。
問題がない場合も、そう判断できる理由を記載します。
・ P(Plan):今後の看護計画や対応
例)症状緩和のため、医師の指示に基づきアセトアミノフェン500mgを1日3回処方、気管支拡張薬の吸入を行う。
アセスメントの結果から判断できる、患者に必要なケア計画、観察項目などを簡潔に記載します。
DAR(フォーカス・チャーティング)形式
DAR形式は、「Focus(フォーカス)」、「Data(データ)」、「Action(アクション)」、「Response(レスポンス)」の4つの要素に分けて記録する方法です。
※一般的にはFを除いて、DAR形式と呼ばれています。「Focus(フォーカス)」の部分は独立して記載します。
DAR形式は、患者の問題や、その解決に向けた具体的なケア内容、最終的な目標に焦点(Focus:フォーカス)を当てて、出来事や懸念点を記録する方法です。
患者の状態変化や看護ケアの効果を時系列で追跡でき、感情面や生活支援などの記録にも適していることから、日常的なケアにおいて非常に使いやすい形式と言えます。
一方で、記録する内容や範囲が記録者に委ねられるため、経過の比較が難しくなる可能性があります。
記録者によって内容が異なると、後からの評価や比較において不整合が生じることもあります。
・ F (Focus):患者が抱える問題点
例)糖尿病性腎症 60歳 女性
・ D(Data):主観・客観両方のデータ
例)空腹時血糖220mg/dL/不安を訴え、手を握りしめている。
・ A(Action):Fに対して実施した治療、指導、計画
例):インスリン量の再調整を医師に提案/安心できるよう説明した。
・ R(Response):患者の反応や結果
例)患者「自分で調整できそう」と発言/表情が和らぐ。
経時記録形式
経時記録形式では、患者の状態や実施したケアを時系列で記録していきます。
経時記録は、主に入院時〜初期計画立案、容体急変時、カンファレンス記録などに用いられます。
形式にとらわれずシンプルでスピーディに書ける反面、問題点が整理されにくい場合もあるため、状況に応じて他形式と使い分ける必要があります。
例:
〇月〇日10:00
「息苦しく、常時胸が痛む」との訴えあり。
バイタルサイン測定:体温36.8℃、脈拍80回/分、血圧125/70mmHg、SpO2 97%(室内気)
持続時間、頻度、誘因、緩和因子などについて問診。
昨日よりも呼吸が浅い。
〇月〇日10:30
医師〇〇に連絡し、症状を報告。
指示に基づき、心電図検査の準備を行う。
〇月〇日10:45
心電図検査実施。SpO2、心電図モニターを持続的に観察。
結果は医師に確認中。
〇〇様に安静臥床を促すとともに胸痛出現時はナースコールを押すよう説明した。
表情は落ち着いている。
POS(問題志向型システム)形式
POS(Problem-Oriented System)は、患者の問題(Problem)に着目して記録を行う方法です。
初めに問題リストを作成し、それに基づいてSOAP形式などで記録を展開していきます。
情報の整理・共有がしやすく、質の高い記録を行いたい場面に向いている形式です。
・ 情報収集
情報収集のステップで問題を発見します。
・ 問題の明確化
「なぜ問題が発生しているのか?」の原因を明確にします。
・ 解決策の立案
仮定した原因を解決するために、解決策を考えます。
・ 計画の実施/評価
立案した解決策を計画通りに実施し、問題解決を行います。
看護記録簡素化の具体的な方法
ここでは、看護記録を簡素化するための具体的な方法を3つご紹介します。
標準化の導入
記録内容や表現方法を統一する「標準化」を進めることで、誰が書いても、誰が読んでもわかりやすい記録が手早く作成できます。
例)
・よく使う表現をあらかじめ決めておく
⇒「創部異常なし」「バイタル安定」など
・記録の順番や内容項目を整える
⇒①観察→②対応→③評価 など
こうすることで記録のばらつきが減り、無駄な確認や修正の手間を減らすことができます。
電子カルテ等、デジタルツールの活用
電子カルテやタブレットなどのデジタルツールを活用することで、紙に比べて効率的かつ安全に記録を行うことができ、現場の負担を大幅に軽減することが可能です。
手書きによるミスを減らしつつ、記録作業を大幅にスピードアップできます。
また、入力ミスや記録漏れを防ぐアラート自動的にチェックする機能を備えたシステムもあり、確認作業の手間が減少します。
これらの機能は、業務の効率化に役立つだけでなく、医療の安全性向上に大きく貢献します。
テンプレートの利用
あらかじめ用意されたテンプレートを活用することで、記録内容を迷わず漏れなく書けるようになります。
看護指示、コスト入力など、必要に応じて項目を登録しておくことで、考える時間や書く時間を短縮し、記録の質を安定させることができます。
また、定型文をすぐに呼び出せるテンプレート機能の他にも音声入力、チェックボックスなどを積極的に活用することで、記録作業の効率が大幅に向上します。
特に新人看護師や忙しい時間帯においてその効果は大きく、業務の負担をぐっと軽減することが可能です。
看護記録の書き方のポイント
看護記録を正しく効率的に書くために、すぐに取り入れられる書き方のポイントをご紹介します。
簡潔かつ明確な記録を行う
看護記録を書く際には、次の3つを意識しましょう。
1. 事実を正確に書く
感情やあいまいな表現を避け、観察したことや行ったケア、その結果などを客観的に記録しましょう。
2. 簡潔に、わかりやすく
誰が読んでも即理解できるように、簡潔な文章を心がけましょう。
3. 5W1Hを意識する
・いつ(When)
・どこで(Where)
・誰が(Who)
・何を(What)
・なぜ(Why)
・どうした(How)
これら5W1Hを意識すると誰でも簡単に、抜け漏れのない記録を残せます。
タイムリーな記録を心がける
正確な情報を確保するためには、出来事が起きた直後に記録をすることが理想です。
後回しにすると、どうしても記録漏れや内容のあいまい化のリスクが高まり、確認作業に余計な時間を取られます。
特に急変時や処置の前後は、時系列を意識して迅速に記録することが重要です。
◎忙しいときは?
ケアや処置で忙しいとき、記録に手をつける時間が取れないこともあります。
そのようなときは、患者の言動や症状を簡潔にメモしておくと良いでしょう。
電子カルテや手元のメモにサッと記録しておけば、後で整理して記録する際、スムーズに進みます。
忙しい時間帯や疲れている時こそ、その場でメモすることを意識することで、その後の記録作業を効率化できます。
施設内での用語を統一する
同じ内容でも表現がバラバラだと、情報共有に時間がかかり、誤解を招くこともあります。
そのため、施設内で使う用語や表記ルールを統一することが、正確かつ効率的に書くための重要なポイントです。
例)
・言い回しを統一(「排尿あり」か「尿失禁」かなど)
・略語や略記は施設内で認められているものだけ使用
・0~10までの11段階で痛みを示す数値評価スケールを使う
・数値で答えることが難しい場合はフェイススケールを使う
用語を揃えることで、誰が書いても誰が読んでも、迷わず理解できる記録を作成できます。
問題点は順を追って説明する
患者の問題を記録する際は、順を追って書くことが重要です。
① 何が起きたか
② どう対応したか
③ どうなったか
この順番に従うことで、読み手にとってわかりやすい記録が残せます。
さらに、記録に評価や今後の対応を加えると、より具体的で有用な情報が残ります。
例)「現在の状態では問題なし」と評価し、「今後の対応として○○を予定している」と記録しておくと、引き継ぎや次のケアが明確になります。
まとめ
看護記録を簡素化することで、看護師の業務を大きく効率化し、日々の看護ケアの質を向上させることができます。
記録の簡素化には、チーム全体で共通のルールを設け、一貫した方法で取り組むことが重要です。
SOAPやDAR形式など、施設や状況に合わせた記録形式を導入し、スタッフ全員が簡潔で明確な表現を心がけること(標準化)や、電子カルテなどのツールを積極的に活用することが効果的です。
これらの取り組みによって記録作業の負担は大きく軽減され、その分、看護師はより多くの時間を患者のケアに充てることができます。
看護記録の作成方法に悩んでいる方は、ご紹介した内容をぜひ参考にしてみてください。