COLUMN

2025.06.15

看護観察ケアの考え方や、環境整備のポイントを解説

看護観察ケアでは、バイタルサインや顔色、呼吸といった身体的な変化を観察するだけでなく、患者が抱える不安やストレスといった心理的側面にも目を向け、原因を見極めながら適切な支援を行います。

さらに、患者が安心して療養生活を送れるように、病室の「環境整備」を行うことも看護観察ケアの重要な役割に含まれます。
音・明るさ・温度・清潔さなど、多角的な視点で病室を整えて、患者がより快適にかつ安全に過ごせる環境を提供します。

看護観察ケアと環境整備を一体として考えることは、質の高い看護の提供において欠かせません。

本記事では、そんな看護観察ケアの基本的な考え方と、日々の実践に役立つ環境整備のポイントについてわかりやすくご紹介します。
患者の小さな変化に気づき、適切に対応できるよう、看護観察ケアについて理解を深めていきましょう。

看護観察ケアの考え方

看護観察ケアとは、患者一人ひとりに合わせた最適なケアを計画・実施するために、身体的、精神的、社会的な側面を含む患者の健康状態を観察することです。

看護師は、患者に最も近い存在として、その生活や人生を支えていく立場にあります。
患者一人ひとりに寄り添い、その人らしい回復を支えていく、それが看護の本質です。

そのため、看護観察ケアで実施する観察の内容は、非常に多岐にわたります。
バイタルサインや治療の効果といった数値的な情報に加え、患者が抱える不安やストレス、生活習慣などにも目を向けます。
これにより、より多角的なアプローチで患者の回復を支えることができるのです。

看護観察ケアの重要性

なぜ看護観察ケアが重要なのでしょうか?
それは、患者の健康を守るために欠かせない以下の理由があるからです。

1. 病気の変化を早期発見できる
看護観察ケアは、病状の変化を早期に発見するための最も基本的な手段です。
日常的な観察を通じて患者の変化を素早く察知することで、病状の悪化を防いで適切なタイミングで対応することができます。


2. 信頼関係の構築ができる
看護観察ケアは患者とのコミュニケーションの機会となり、信頼関係の構築に役立ちます。

治療効果を最大化するためには、身体的な症状だけでなく、患者の不安や悩み、生活習慣などの情報や問題点をよく傾聴し、それらに対して適切な援助を提供することが求められます。

患者に寄り添った対応を行い、これらを改善することで、患者に安心感や信頼感を与えることができるでしょう。

そうすることで、患者が抱える治療に対する不安や入院中のストレスを軽減することができ、回復過程に良い影響を与えられると考えられます。

3. 医療チームとの情報共有
看護観察ケアによって得られた様々な情報を他の医療スタッフと共有することで、それぞれの患者の状態に合わせて適切な治療・対応が実施できます。

看護観察ケアは、看護計画や治療方針を決定するうえでの重要な基盤となり、チーム全体の治療方針を一致させるために不可欠なものなのです。

患者の状態把握方法

患者の状態をより細やかに把握するために、観察を行う際は複数の方法を組み合わせることがポイントです。
数値の確認だけでなく、身体的症状や心理的側面の観察、そして患者とのコミュニケーションなど、様々な角度から患者の状況を読み取りましょう。

バイタルサインの観察

バイタルサイン(生命兆候)は、患者の健康状態を評価するための基本的な指標です。
脈拍、呼吸、体温、血圧、意識レベルの5つの項目が含まれます。

バイタルサインを継続的に観察し、異常が見られた際には速やかに対応することで、病状を悪化させる前に適切なケアを提供することができます。


【観察方法】
バイタルサインは、朝・昼・晩の1日3回、定期的に測定して記録することが一般的です。
そのときの数値が基準値から逸脱しているかどうかだけではなく、前回の値や、前日の数値と比較することが非常に重要です。
時間ごとの変化や日々の変動を把握することで、患者の状態をより正確に理解できます。

身体的な観察

身体的な観察
バイタルサインで得られた数値を見るだけではなく、患者の顔色など身体的な観察も体調の変化を把握するために欠かせません。

【観察ポイント】
・食欲や体重の変化
・顔色、皮膚の色
・浮腫や発汗の有無
・呼吸の様子
・筋肉や関節の可動域
・痛みや不快感の兆候

自分の状態を言葉でうまく伝えられない患者や、症状を自覚できていない患者もいます。
看護師は患者が発するサインを見逃さないよう、注意深く観察しましょう。

精神的な観察

患者の心理状態は、回復過程に大きな影響を与えます。
心のケアをおろそかにせず、患者との信頼関係を深めることが回復を助ける大きな力となります。

治療効果を最大化するためには、患者の心理的なストレスや不安、悲しみ、興奮、混乱などの感情を読み取り、適切なサポートを提供することが求められます。

患者の表情や言動、コミュニケーションの様子に着目し、心理的な負担やストレスの程度を評価しましょう。
患者が安心して治療に臨めるよう、言動だけでなく内面の感情にも気付くことが重要です。。

【観察ポイント】
・表情や言動
・意識状態
・コミュニケーションの様子
・社会的支援の必要性
・よく眠れているか

看護観察ケアにおける環境整備のポイント

患者が治療に専念できるよう、安全で快適な環境を提供することも看護師の重要な役割です。
ここからは、看護観察ケアにおける「環境整備」について解説します。

環境整備の目的

環境整備をなぜ行うのか?まずは、その目的を確認しましょう。

1. 感染症予防
病室を清潔に保つことで、感染症が蔓延するのを防ぎます。
患者に対してはもちろん、そこで働く医療スタッフにとっても感染症予防は重要です。

2. 安全・安楽
治療に専念するには、転倒や転落のリスクを最小限に抑え、安全に過ごせる環境を作ります。
患者のストレス軽減のためにも、快適さへの配慮が求められます。

3. 自立を促す
患者のADL(日常生活動作)を維持・拡大させるようサポートします。
治療を終えて日常生活に戻ることを想定し、患者が自分でできることが増えるような環境作りが必要です。

また、病室に対して不満があっても、それをすぐに看護師へ伝えられる患者は決して多くはありません。
だからこそ、「患者から指摘がない=不満がない」とは考えず、常に患者の立場に立ち先回りして対応する姿勢が大切になります。

6つの視点

看護師にとって環境整備は、ただ「片づける」「掃除する」という作業ではなく、患者が安心・安全に過ごせる空間を整えるための大切なケアの一環です。

目に見える不快だけでなく、見えにくい不安や不満にも気づけるよう、五感と心をしっかり働かせて環境に向き合うことが、質の高い看護につながります。

看護観察ケアにおける環境整備では、患者が快適に過ごせるよう以下の6つの視点から環境を整えることが大切です。

・音
・明るさ
・気温
・におい
・清潔
・広さ

順番に見ていきましょう。

 

1. 音
看護師同士の話し声や処置音、廊下からの音など、気になる音はありませんか?
特に、夜間は患者の睡眠を妨げないよう十分に配慮します。

アラーム音や機械音が不必要に大きな音を発していないかなど、適宜、患者に聞き取りすることも大切です。

◎理想的な音量
日中:50デシベル以下(普通の会話の声程度)
夜間:40デシベル以下(耳をすましてささやき声が聞こえる程度)

 

2. 明るさ
病室の明るさは、患者にとって快適ですか?
体内リズムを整えるために、日中はカーテンを調整しながら自然光を取り入れることが推奨されます。
昼間でも部屋が暗すぎると不安感が増してしまうこともあります。

◎理想的な明るさ
100~200ルクス(街灯くらいの明るさ)


3. 気温
病室の温度管理は患者の体調に大きく影響します。
快適な気温は体調によって異なることも多いため、室温がちょうどいいか、患者に直接聞き取りすることも大切です。
特に多床室では、個々の患者の体調に配慮しながら、個別に調整する必要があります。
その際は、羽織物や掛け物を使って、個々の患者に合わせた温度管理を心がけましょう。

◎理想の気温/湿度
気温:17度~28度
湿度:40%~70%


4. におい
病室に不快なにおいがこもっていませんか?
快適に過ごせるよう、においの原因を排除し、定期的に換気を行いましょう。

◎においの主な発生源
・食事
・排泄物
・ごみ など

 

5. 清潔
病室に汚れや不潔な場所がないよう、常に注意を払いましょう。
清潔で快適な空間を提供することは快適性を保つだけでなく、感染症予防にも重要な役割を果たします。

◎チェックポイント
・髪の毛や落屑:粘着クリーナーを使って掃除する。
・血液、汗、痰、廃液などの汚れ:リネンを交換する。カーテンの汚れにも注意。
・点滴棒や車椅子、医療機器、患者が触れる場所:環境清拭クロスで清拭する


6. 広さ
病室内に余計な物が置かれていると転倒リスクが高まるため、ベッドの周囲を整理整頓します。
特に多床室ではベッド間隔を十分に保ち、患者が支障なく動けるスペースが確保されているか確認します。
合わせて、カーテンなどの仕切りでプライバシーへの配慮がなされているかも確認します。

◎チェックポイント
・病室の広さ:患者一人当たり6.4m²以上が原則(※一般病床の目安)
・使用頻度の高いものは健側に配置(ティッシュ、ゴミ箱、ナースコールなど)
・ルート類の整理(点滴、モニター、ナースコールなどのルートが絡んでいないか)

環境整備の手順

看護観察ケアにおける環境整備の手順を紹介します。
なお、これから紹介する手順は一般的なものです。

実際に環境整備を行う際は患者一人ひとりの状況に応じて、特に緊急度の高い事項から優先して対応しましょう。

 

▼看護観察ケア 環境整備の手順例

手順 方法
① 準備 ・患者に対して環境整備を行うことを説明し、同意を得る。
・環境整備に必要な物品を揃える。(清掃用具等)
② 換気 ・患者のプライバシーに配慮しながら行う。
・不快な匂いがする場合は原因を取り除く。
③ 室温/明るさの調整 ・室温・湿度・照明を適切に調整する。
④ ベッド周辺の確認 ・必要に応じてリネンの交換、ベッド柵やナースコールの位置を確認する。
⑤ 清掃 ・感染予防に配慮しつつ、廃棄物の処理等を行う。
・ベッド柵やテーブルなどを消毒用クロスで拭く。
⑥ 物品の配置 ・患者のADLに合わせて、身のまわりの物を配置する。
・本人に確認しながら、よく使うものは手の届く位置に設置する。
⑦ 安全確認 ・医療機器やルート類の配置を整理する。
・転倒リスクがないか確認する。(患者の靴や服装にも気を配る)
⑧ 終了 ・他に困っていることはないか、患者本人に聞き取りを実施。
・患者に環境整備の終了を伝える。
・看護師の手指消毒を行う。

看護計画の立て方

環境整備を行うときは、看護計画に基づいて進めることが大切です。
看護計画を立てる際は、まず患者の課題や目標を明確にし、それらに対して必要なケアをリストアップするという手順で進めます。

1. 患者の現状を把握する
患者の状態や生活習慣をよく理解しましょう。
⇒年齢、ADL(身の回りの動作能力)、病気の状態、認知機能などを確認します。


2. 課題を明確化する
患者の困りごとや病室の改善点をリストアップします。
⇒転倒しやすい、周囲の音に不快感がある、感染予防ができていない、など。


3. 目標を設定する
課題に対して目標を設定します。
環境整備の目的をよく考え、その目的に合った目標を立てるようにします。

(例)
・転倒の要因を排除し、安全な生活環境を整える
・静かに落ち着いて過ごせる環境を作る
・病室を清潔に保ち、感染症予防に努める など


4. 介入計画を立てる
目標実現に向けて、観察すべき項目をリストアップします。

【転倒対策】
・コード類や医療機器が歩行の妨げになっていないか
・ベッドの高さが適切か
・靴が履きやすい位置に配置されているか
・私物が足元に置かれていないか

【感染症予防】
・衣服や寝具などに汚れがないか
・シーツにシワがないか(床ずれ対策)
・テーブルやベッド柵など直接手の触れる場所の清潔が保たれているか
・排泄物やごみが速やかに処理されているか
・湯呑みや箸、スプーンなど食器類は清潔か

【騒音対策】
・医療機器の設置場所が適切か
・病室内での会話時間の調整(患者の休息の妨げになっていないか)
・アラーム音や機器の作動音が不必要に大きくないか


5. 評価と改善
実施後は、各患者の目標に対して実際にどうなったのかを具体的に記録し、確認します。

目標が達成できた場合、看護環境の問題は解決されたと言えます。
しかし、もし達成できなかった場合は原因を丁寧に分析することが重要です。

目標が高すぎたのか、看護計画が不十分だったのか、または計画通りに実施できなかった部分があったのか、しっかりと考えましょう。

原因を特定したら、目標の見直しや、計画の追加、あるいは計画がしっかり実施されるようスタッフへの周知を行うことが求められます。

「計画⇒実施後の評価」を繰り返すことで、患者にとってより良い療養環境を提供することができます。

まとめ

看護観察ケアは、患者に適切なケアを提供するために、患者の状態を様々な角度から観察することです。
バイタルサインや顔色、呼吸などの身体的な状態に加え、心理的な不安やストレスにも目を向け、患者一人ひとりに合わせて最適な支援を行います。

看護観察ケアを効果的に実施するためには、患者が安心して治療に専念できる「環境整備」も欠かせません。
音、明るさ、気温、におい、清潔、広さといった6つの視点から病室を整え、安全で快適な環境を作り上げることが、回復を促進するためには不可欠です。

看護観察ケアと環境整備を一体的に考えることで、患者がより良い療養環境で治療を受けることができ、回復をより効果的にサポートすることが可能となります。

質の高い看護を提供するために、日々の丁寧な観察と、患者が安心して過ごせる環境づくりに努めていくことが大切です。

 

 

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