COLUMN

2026.02.13

【2026年最新】標準型電子カルテとは?既存電子カルテとの違い・導入コスト・今後の動向を解説

標準型電子カルテとは、国(デジタル庁・厚労省)が開発・提供する「全国医療情報プラットフォーム」と連携するための共通仕様の電子カルテで、医療情報の世界的標準規格「HL7 FHIR(エイチエルセブン・ファイアー)」に準拠した電子カルテです。

全国の医療機関で患者の医療データを円滑に共有・活用できるようになれば、医療の効率化や安全性向上、さらには医療DXの推進にも大きく貢献すると期待されています。

こうした背景から、政府はデジタル庁主導で、使いやすさや導入しやすい価格帯を重視した標準型電子カルテの開発を進めています。

現在は試作段階のα版が一部医療機関で運用されており、2026年度中に通常版のリリースを目標としています。

本記事では、標準型電子カルテの基本的な概要から、既存カルテとの違い、導入コストまでわかりやすく解説します。

さらに、α版と通常版の違いや最新のリリース情報、今後の動向についても紹介します。

標準型電子カルテとは

標準型電子カルテとは、デジタル庁が中心となり、民間事業者と協働しながら開発を進めている、クラウド型の電子カルテシステムです。

大きな特徴は、世界的な医療情報標準規格である「HL7 FHIR(エイチエルセブン・ファイアー)」へ準拠している点です。

これにより、政府の推進する医療DX施策「全国医療情報プラットフォーム」に接続することが可能となり、医療機関やシステムの違いを超えて診療情報を共通形式で扱うことができます。

現在は試作段階にあたる「標準型電子カルテα版」が、一部の医療機関でモデル事業として運用されています。

今後は、α版の運用を通じて得られたデータや現場の意見をもとに改良を重ね、2026年度中に〈通常版〉として本格リリースされる予定です。

なお、「標準型電子カルテ」という言葉は、現在2つの異なる意味で使われており、少々わかりにくい状況となっています。

①  政府主導で開発されている「標準型電子カルテ」
②  各ベンダーが開発する「標準規格準拠の電子カルテ」

政府が開発している標準型電子カルテも、数ある電子カルテの中の一つの選択肢にすぎません。
そのため、導入にあたっては各電子カルテシステムの特徴をよく理解し、自院にとって最適なシステムを選ぶことが重要です。

本記事では、上記①の政府主導で開発されている「標準型電子カルテ」を中心に解説していきます。

早速、標準型電子カルテとは何か?詳しく見ていきましょう。

医療機関の課題と、標準型電子カルテの役割

標準型電子カルテによって何がどのように変わるのか、その役割を理解するために、まずは現在の医療現場が抱えている課題を整理しましょう。

医療DXの推進

現在の日本では、少子高齢化の進行や医療人材の不足が深刻化しています。
このままでは、限られた医療資源の中で、質の高い医療を安定的に提供し続けることが難しくなると考えられています。

そのため、医療分野全体のデジタル化をはじめとする、医療の在り方そのものを見直す取り組みである「医療DX」の推進が急務となっています。

そして、この医療DXの中核を担う施策の一つとして、
2030年を目処に、電子カルテの標準化および情報共有基盤を全国の医療機関に普及させることが目標に掲げられています。


標準型電子カルテを活用することで、全国の医療機関間で診療情報を安全に共有・活用できるようになり、医療提供体制の効率化や、患者一人ひとりに最適化された医療の実現が期待されています。

標準型電子カルテの整備・普及は、医療DXを進めるために不可欠であり、今後の日本の医療改革における第一歩といえるでしょう。

全国医療情報プラットフォームによる情報共有の実現

標準型電子カルテを活用することで、政府が整備を進めている「全国医療情報プラットフォーム」との接続が可能となります。

これは、標準型電子カルテが、世界的な医療情報標準規格である「HL7 FHIR(エイチエルセブン・ファイアー)」に準拠したシステムとして設計されているためです。


全国医療情報プラットフォームでは、患者の医療・介護に関する情報を全国規模で安全に共有する事が可能となります。

例えば、以下のような医療情報が医療機関間で連携可能です。
・ レセプト情報
・ 特定健診等情報
・ 予防接種情報
・ 電子処方箋情報
・ 自治体検診情報
・ 電子カルテ等の医療・介護情報全般

これにより、具体的にどのようなメリットが得られるのか、さらに詳しく見ていきましょう。

医療情報を共有できることによるメリット

現在の医療現場では、患者が複数の医療機関を受診することが一般的ですが、診療情報は医療機関ごとに個別で管理されています。

そのため、別の医療機関を受診するたびに、以下のような問題が生じることがあります。

・ 同じ問診への回答を繰り返す
・ すでに実施された検査が重複して行われる
・ アレルギーや服薬内容が十分に把握されない

このような状況は患者の負担を増やすだけでなく、医療の安全性や効率性の低下を引き起こします。

医療機関の垣根を越えて診療情報を共有できるようになれば、切れ目のない、より質の高い医療を提供できるという大きなメリットが得られます。

なお、この方向性は「医療DX令和ビジョン2030」においても明確に示されており、電子カルテの標準化と全国医療情報プラットフォームの整備は、医療DXの中核的な施策として位置づけられています。

標準型電子カルテと既存カルテの比較

これまで見てきたように、標準型電子カルテを導入することで、全国医療情報プラットフォームをはじめとする医療DX関連システムとの連携が可能となります。

一方で、標準型電子カルテの導入は義務ではないため、現在も紙カルテを使用している医療機関や、標準規格に対応していない独自仕様の電子カルテを利用している医療機関も少なくありません。

将来に向けてより良い医療体制を築くためには、既存カルテと標準型電子カルテの違いを正しく理解し、その必要性を判断することが重要です。

まずは、両者の特徴を簡単に比較してみましょう。

▼標準型電子カルテと既存カルテの主な違い

大きな比較ポイントに、医療情報標準規格「HL7 FHIR」に準拠しているかどうかという点が挙げられます。

これまで電子カルテは、民間ベンダー各社から多様な製品が提供されてきました。
しかし、データ形式がベンダー独自仕様であるケースが多く、他医療機関や外部システムとの連携が難しいのが大きな課題です。

全国医療情報プラットフォームや電子カルテ情報共有サービスといった医療DX関連システムと接続するためには、HL7 FHIR(標準規格)への準拠が原則として求められます。

そのため、たとえ電子化されていても標準規格でない場合は情報共有が十分に進まず、活用の面では紙カルテと大きく変わらないケースも少なくありません。


一方、標準型電子カルテは HL7 FHIR(標準規格)に準拠しており、傷病名、検査結果、処方情報などを共通形式で管理・共有できます。

共通規格で集約された診療情報は、以下のように「使えるデータ」として幅広く活用することが可能です。
・ 日常診療における情報共有
・ 医療機関間の連携強化
・ 臨床研究や医療分析への活用 など

医療提供体制が逼迫する現在、他の医療機関と診療情報を円滑に共有できる基準を満たしているかどうかは、将来を見据えて検討しておくべき重要なポイントといえるでしょう。

標準型電子カルテ<α版>の動向

ここからは、「標準型電子カルテ(α版)」について解説します。
医療DX推進計画に合わせ、2024年度から一部医療機関で α版を用いたモデル事業 が展開されています。

標準型電子カルテα版とは

標準型電子カルテの「α版」とは、一言で言うと試作段階の標準型電子カルテです。

現在は医療機関で実際に運用して得られた課題や改善点を検証し、より使いやすく安定したシステムへと改良している最中です。

《α版の開発目的》
政府は2030年までに、電子カルテの全国普及を目指しています。
しかし実際には、中小規模の病院や診療所を中心にあまり導入が進んでいません。

その主な理由は以下の通りです。

・ コストの問題(電子カルテは高額で、導入のハードルが高い)
・ 選択肢の多さ(どの電子カルテを導入すべきかわからない)
・ ITリテラシーへの不安(現在も紙カルテを利用している) など

こうした課題を解決しなければ、標準型電子カルテの活用を前提とする、医療DXそのものが円滑に進みません。

そのため政府は、電子カルテ未導入の医療機関を対象に、使いやすさと導入しやすい価格帯を両立した標準型電子カルテの開発を行っています。


《α版の機能》
α版は価格を抑えなければならないこともあり、必要最小限の機能で構成されています。

現段階では、外来に特化した機能で構成され、経過記録表や帳票の作成など入院中に必要とされる機能は搭載していません。

α版の主な特徴、機能は以下の通りです。
・ クラウド型
・ 外来受付、診療記録、処方、検査オーダーなどの基本機能搭載
・ API連携により、レセコン、予約システムなどの民間サービスを追加可能
・ 紙カルテとの併用を想定した画面設計
・ 経営ダッシュボードなどの付加機能は含まない
・ 入院関連の機能は搭載されない

※α版はあくまでもモデル事業となり、「通常版」に搭載される機能は変更となる可能性があります。

運用スケジュール|標準型電子カルテ<通常版>リリースはいつ?

α版で得られた検証結果や改修内容を反映させた通常版(本格版)は、2026年度以降に本格リリースされる予定です。

通常版では、より多くの診療科や医療機関形態に対応するとともに、全国医療情報プラットフォームや電子処方箋管理サービス、オンライン資格確認などの医療DX基盤と統合的に利用できることが期待されています。

標準型電子カルテの導入コスト

現時点では、政府が開発を進めている標準型電子カルテ「通常版」の具体的な費用は未公表となっています。

ただし、国主導で開発されるシステムであることから、市場価格を参考にしつつも、医療機関が導入しやすい比較的安価な価格帯になることが想定されています。

また、制度改定や仕様変更に合わせたアップデートにも柔軟に対応できるよう設計されており、導入後の運用負担を抑えられることも期待されています。

コストを抑えるために

標準型電子カルテの導入コストは多くの医療機関にとって気になる点ですが、紙カルテや既存の電子カルテを使い続けるほうが必ずしも安いとは限りません。

標準型電子カルテを導入しなくても現状維持は可能です。
しかし、将来的に以下の理由で追加費用がかかるなど、かえってコストがかさむ可能性があります。

・ 診療報酬制度の改定への対応
・ 医療DX関連システムとの連携
・ 追加開発や仕様変更への対応
・ スタッフの業務負担増加や人件費の増大
・ 患者満足度の低下 など

数字に表れにくい「見えないコスト」も考慮すると、早めに標準化への対応を進める方が、長期的にはトータルコストを抑えられる可能性があります。

補助金や既存カルテの活用

電子カルテ情報共有サービスの環境整備については、補助金制度を活用できる場合があり、初期費用や導入時の負担を軽減できるケースもあります。
事前に制度内容を確認しておくとよいでしょう。

【参考】電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金
https://iryohokenjyoho.service-now.com/csm?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0010765

また、政府の標準型電子カルテを導入しなければ、電子カルテ情報共有サービスを利用できないというわけではありません。
既存の電子カルテでも、HL7 FHIR(標準規格)に対応済み、または対応予定である場合には利用可能です。

まずは、現在利用している電子カルテベンダーに、標準化対応状況を確認しておきましょう。

事前に進めておきたい準備

政府の標準型電子カルテが本格リリースされるまでの間、以下の準備を進めておくと導入・移行がスムーズになります。

・ 複数ベンダーからの情報収集や見積もり
・ 自院の課題を洗い出す
・ 自院に必要な機能のピックアップ
・ スタッフに対して医療DXの説明、情報共有 など

早めに検討を始めることで、医療DXの波に乗り遅れず、スムーズな導入を目指すことができます。

 

まとめ

標準型電子カルテとは、政府主導で開発が進められているクラウド型の電子カルテです。
医療情報の世界的標準規格「HL7 FHIR」に準拠していることから「標準型電子カルテ」と呼ばれています。

今後の日本の医療提供体制を支えるため、医療DXを推進する上では「全国医療情報プラットフォーム」への接続が必須です。
その際、原則として標準規格に基づいたデータの取り扱いが求められます。

政府の標準型電子カルテは、現時点では2026年度に本格リリース予定とされています。
紙カルテや既存の規格非対応電子カルテを使用している医療機関は、早めに電子カルテの導入、標準化についての情報収集や準備を進めることが重要です。

※本コラムは一般的な情報提供を目的としており、記載内容が当社製品の機能・仕様を示すものではありません。実際の製品仕様については、製品ページをご確認ください。

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