2025.01.21
電子カルテと紙カルテの併用はできる?移行する際の注意点を徹底紹介
電子カルテと紙カルテは併用することが可能です。
紙カルテから電子カルテへ移行する際には、既存のデータを電子カルテシステムに取り込む作業が必要となり、時間や手間がかかります。
そんな時は、電子カルテと紙カルテの併用を検討してみましょう。
併用することで、移行作業の負担を最小限に抑えながら、自院のペースでカルテの電子化を進めることができます。
本記事では、電子カルテと紙カルテに焦点を当て、スムーズに電子カルテへ移行するための手順や注意点など、役立つ情報をお伝えします。

電子カルテと紙カルテの併用は可能か?
電子カルテと紙カルテは併用して利用することが可能です。
紙カルテを電子カルテへ移行するためには、紙カルテをスキャンしたり手入力したりする方法で、既存のデータをシステムに取り込む作業が必要となります。
しかし、移行に伴うこれらの作業には多くの手間と時間がかかります。
そんな移行作業の負担が大きな課題となり、電子カルテの導入時期をなかなか決められない医療機関も少なくありません。
そこで、電子カルテと紙カルテを併用しながら通常業務と並行して、少しずつデータの移行作業を進める方法をご紹介します。
電子カルテと紙カルテを併用することで、業務負担を最小限に抑えながら電子化を進めていくことができます。
併用するメリットとデメリット
はじめに、電子カルテと紙カルテのそれぞれのメリットや、併用することで生じるメリット・デメリットについて解説します。
電子カルテのメリット
電子カルテには、以下のようなメリットがあります。
・業務効率化が図れる
・リアルタイムで情報を共有できる
・医療ミスの防止につながる
・カルテの保管場所を削減できる
電子カルテはデータの検索や整理がパソコン上だけで完結し、患者情報の管理が素早く正確に行えるのが大きな特徴です。
カルテの保管スペースも必要としません。
患者の情報をリアルタイムで複数の医療従事者と共有できるため、よりスピーディな診療を行うことが可能となります。
また、処方の重複や薬剤の間違いなどを防止するためのアラート機能や、書類作成のテンプレート機能なども充実しており、医療ミスの防止にも役立ちます。
このように、電子カルテには業務効率を大幅に向上させ、医療の安全性や質を高められるというメリットがあります。
【参考】電子カルテを導入するメリット・デメリットを詳しく解説
紙カルテのメリット
紙カルテには、以下のようなメリットがあります。
・低コスト
・導入・運用のハードルが低い
・システムトラブルや停電の影響を受けない
紙カルテは、一般的な事務用品があれば手軽に導入でき、低コストで運用できるのが特徴です。
電子カルテの場合は、パソコンや周辺機器の購入費用をはじめ、サーバー代・ソフトウエア利用料、定期的なシステムの更新などにまとまった費用がかかります。
それに対し、紙カルテは長期的に見てもコストパフォーマンスが良く、予算に余裕がない場合でも十分に運用が可能です。
また、紙カルテはパソコン操作を必要とせず、医療従事者が新たにITスキルを習得する必要がありません。
PC操作に不慣れなスタッフが多い環境でもすぐに使うことができます。
このように、紙カルテには手軽に導入・運用できるというメリットがあります。
併用することのメリット
紙カルテと電子カルテを併用することで、多くの手間や時間を要するデータの移行作業を、無駄なく効率的に進められるというメリットがあります。
紙カルテ:過去の情報を見るためにのみ使用する
電子カルテ:新たなデータはすべて電子カルテに入力する
上記のように運用していくことで、徐々に紙カルテの使用頻度を減らしていくことができ、移行作業の手間を最小限に抑えてカルテの電子化を進める事ができます。
ちなみに、紙カルテの電子化について「電子情報と紙等の情報が混在することで、運用上著しく障害がある場合等に限定すべきである。」とガイドラインで言及されています。
つまり、特に支障が無い限りは、既存の紙カルテはわざわざスキャン等して電子化しなくても問題ありません。
【参考】厚生労働省|9 診療録等をスキャナ等により電子化して保存する場合について
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/10/dl/s1022-12g_007.pdf
併用することのデメリット
電子カルテと紙カルテを併用する際には、いくつかのデメリットも存在します。
・運用が複雑になる
両方のカルテを同時に管理し、必要な場面に応じて使い分ける必要があります。
スタッフが業務フローに慣れるまではミスが起こりやすくなるリスクがあります。
・コスト負担や保管スペースの増加
紙カルテと電子カルテ両方の維持費がかかることに加えて、それぞれのカルテ保管スペースが同時に必要です。
電子カルテと紙カルテの併用においては、一時的とはいえこれらのデメリットもあります。
併用のデメリットが気になる、診療業務が忙しくて電子カルテにまで手が回らない、そのような場合は紙カルテのデータ移行作業を代行してくれる専門業者に依頼する方法もあります。
費用はかかりますが、スタッフに負担をかけること無く短時間で紙カルテを電子化できるため、時間をかけられない場合にはぜひ検討してみましょう。
電子カルテと紙カルテを併用するための手順
紙カルテと電子カルテを併用しながら、スムーズに業務を進めるためにはどのような手順を踏んだら良いのか?
ここからは、電子カルテの導入手順について解説します。
導入前の準備
① カルテを電子化する目的やニーズを明確にする
例)
・業務を効率化したい
・診療情報のリアルタイム共有がしたい
・医療ミスの防止に役立つ機能が欲しい
・患者の待ち時間を減らしたい
・紙カルテの保管スペースを有効活用したい など
さらに病院の規模や診療科目に合う、必要な機能をリストアップします。
② システムの選定・移行方法を決める
データ連携や使いやすさ、サポート体制を確認し、最適なシステムを選びましょう。
導入費用だけでなく、運用後のコストも考慮して比較検討することが大切です。
たくさんありすぎてどの電子カルテシステムを選んでいいかわからないという場合には、ベンダー(電子カルテシステムの提供会社)に相談してみることもおすすめです。
ベンダーは電子カルテ移行時のサポート体制を整えており、各医院に最適なシステムや移行方法を提案してくれますよ。
《主な移行方法》
・データコンバート:レセコンの患者属性情報を出力し、電子カルテシステムに取り込む方法。
・PDFファイル:紙カルテをスキャナでPDF化し取り込む方法。
・手入力:手作業でのデータ入力。(業務負担が大きいため、対象範囲を絞る事が必須)
・併用運用:既存患者は紙カルテ、新規患者は電子カルテなどルールを決めて徐々に移行する方法。
実際の運用手順
電子カルテシステムを決定したら、ネットワーク環境やハードウェアの整備、バックアップ体制を整え、基本操作や業務フローのトレーニングを開始します。
その際、既存の紙カルテから電子カルテへのデータ移行や併用に関するルール・手順をマニュアル化して、ミスや混乱を防ぎましょう。
例)
紙カルテ:過去の情報を見るためにのみ使用し、今後は紙カルテを増やさない。
電子カルテ:◯月◯日以降のデータは、すべて電子カルテに入力する。 など
導入後のサポート体制
電子カルテはシステム障害や端末の故障、停電や水害などのトラブル発生時には使えなくなってしまう可能性があります。
そのような時、どこに連絡してどのようなサポートが受けられるのか、修理が必要になった際は復旧するまでどのくらいの期間を要するのか等、事前に確認しておきましょう。
また、トラブル発生時の運用(一時的に紙カルテに戻す等)を想定したマニュアル作成も必要です。
定期的にシミュレーションを実施し、いざというときに落ち着いて対応できるよう備えておきましょう。
併用時の注意点
電子カルテと紙カルテを併用する際には、以下の点に注意しましょう。
データ管理とセキュリティ
紙カルテや同意書などの書類をスキャンして電子化した際には、改ざんを防止するために読み取った情報に対して「電子署名」と「タイムスタンプ」を付与しなければならないとガイドラインにて定められています。
これにより、スキャンしたデータは元の紙カルテと同等の原本性を保持させることができます。
《電子署名とは?》
紙文書の印鑑・サインに該当するもので、「その電子文書が署名者本人により作成されたものであり、改ざんされていないことを証明するもの」を示します。
《タイムスタンプとは?》
電子データが作成された日時を記録します。
タイムスタンプが付与された時刻に文書が確かに存在していたこと、その時刻以降に改ざんされていないことを証明するものです。
【参考】厚生労働省|医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版(システム運用編)(令和5年5月)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001102570.pdf
スキャン後不要になった紙カルテは、各医療機関の判断でこのまま保存するか破棄するかを決められます。
厚生労働省は、元の紙カルテを電子化したデータと共に保管することは、「真正性・保存性として極めて有効」とし、破棄を義務付けてはいません。
しかし、保管スペースには限りがあります。
個人情報の取り扱いに十分注意した上で、院内でシュレッダー処理、又は機密文書処理業者に委託して、紙カルテを破棄することも問題ありません。
実施計画書を作成する
紙カルテを電子化する場合は、カルテを電子化するということを事前に患者に周知しなければならないと、既述のガイドラインにて定められています。
そのため実施計画書を作成し、ホームページやパンフレット、口頭にて説明などで情報提供をして同意を得る必要があります。
可能性は低いですが、万が一異議の申し立てがあった場合にはカルテを電子化できないため注意しましょう。
紙カルテを増やさない
電子カルテと紙カルテを併用する際には、大前提として紙カルテをこれ以上増やさない事が大切です。
いつまでにすべてのデータを電子化する、という明確な期限はありませんが、紙カルテが増え続けてしまうと電子カルテへの移行はいつまでも完了しません。
新規の患者には電子カルテを使用し、紙カルテは参照のみにするなどのルール作りが重要です。
まとめ
電子カルテと紙カルテは併用できます。
併用することで、データの移行に伴う作業を減らし、スムーズに電子化を進めることができます。
併用する際は、自院に合った方法で紙カルテを徐々に減らしていけるようなルール作りをすることがポイントです。
また、紙の情報を電子化する際には「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を理解した上で、適切に運用していくことが重要です。
様々な分野においてデジタル化が推進される中、医療現場でも迅速なデジタル化が求められています。
現在紙カルテを利用している医療機関は、早めに電子カルテへの移行計画を立て、準備を進めるようにしましょう。