2025.01.28
電子カルテ普及率の最新動向と課題
電子カルテの普及率は令和5年時点で約50%~60%と、全医療機関の約半数程度しか導入が進んでいません。
電子カルテの普及率が上がらない理由は、導入コストの問題やリソース不足、さらにそもそも電子カルテの必要性が理解できていないということが考えられます。
病床規模の小さい病院や診療所では、この傾向が特に顕著に見られ、電子カルテの導入推進に向けて、まずは導入コストの削減やサポート体制の強化、電子カルテの利活用に関する意識改革が必要と考えられます。
これらの課題を解決すべく、電子カルテの導入が推進される理由や導入メリットなど、電子カルテに関する最新の動向について解説します。

電子カルテの普及率に関する統計データ
電子カルテの普及率(導入率)は年々増加傾向にありますが、令和5年時点での中小規模病院の普及率は65.6、診療所においての普及率は55%に留まっています。
これは、政府が掲げる「2030年までにすべての医療機関で電子カルテの導入を完了する」という目標には依然として届かない数値であり、電子カルテのさらなる普及に向けて解決すべき課題が多く残されているという状況です。
《なぜ電子カルテの導入を推進しているのか?》
電子カルテの導入が進められている背景には、政府の医療DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の狙いがあります。
医療DXとは、最先端のデジタル技術を活用し、医療現場の効率化や医療サービスの質の向上を目指す取り組みのことです。
《医療DXで実現できること 一例》
・全国医療情報プラットフォーム(医療機関間で患者データを共有・活用する仕組み)の活用
・ペーパーレス化
・医療従事者の人材不足解消 など
未来へ向けて持続可能な医療体制を築くためには、医療DXの実現が必要不可欠です。
患者データを安全、正確に共有できる電子カルテは、医療DXを目指すうえでの中心的な役割を果たすものであり、将来的には全医療機関に導入することが求められています。
同時に、電子カルテの標準化(HL7 FHIR規格対応)も国主導で進められています。
【参考】厚生労働省|医療DXについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx.html
【参考】厚生労働省|電子カルテ等の標準化について
https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/000685281.pdf
全体の普及率の推移
令和5年(2023年)時点での電子カルテの普及率は、一般病院で65.6%、一般診療所で55.0%となっています。
全体の数値としては、電子カルテの普及率が少しずつ上昇してはいますが、このままのペースでは、政府の目指す2030年までの完全普及を達成できない可能性が高い状況となっているのです。

【出典】厚生労働省|第23回 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ2024(令和6)年12月2日
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001343122.pdf
医療機関別の普及率
政府の目指す医療DX化(医療デジタル化)の実現に向けて、大規模病院や新規開業医院を中心に電子カルテの導入が進んでいることもあり、数値の伸び率だけを見ていると、一見スムーズに電子カルテの普及が進んでいるように見えます。
しかしながら、医療機関全体で見ると電子カルテの導入率は約半数とまだまだ低く、中でも200床未満の一般病院、診療所での導入率は60%未満にとどまっています。
なぜ一部の医療機関でしか、電子カルテの普及が進んでいないのでしょうか。
電子カルテの普及率があがらない理由
電子カルテの普及が思うように進まないのには、以下のような理由が考えられます。
導入コストの課題
電子カルテの導入コストが大きな負担となり、必要性は理解しているものの導入できていないというケースがあります。
病床規模の小さい病院や診療所では、この傾向が特に顕著です。
電子カルテを導入するには、初期費用に加えて毎月の運用コストが発生します。
・初期費用(導入に関する費用)
パソコンやタブレット端末、ネットワークの接続費用等
・運用コスト…システムごとの価格差あり/月極の利用料が発生
手厚いサポートや機能性の高さを求めるほど、月の利用料は高くなる。
《コストを抑えるポイント》
・必要な機能を見極める…機能を抑えて安価なシステムを選択する。(機能性と価格は比例します)
・補助金の活用…政府や自治体によっては電子カルテ導入時に使える補助金制度があります。
【参考】電子カルテの義務化はいつから?導入手順と補助金を解説
【参考】東京都 令和7年度病院診療情報デジタル推進事業
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/jigyo/ictkiban
【参考】電子処方箋管理サービス等関係補助金の申請について
https://iryohokenjyoho.service-now.com/csm?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0010040
【参考】電子カルテ情報共有サービスの導入に掛かる補助金
https://iryohokenjyoho.service-now.com/csm?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0010765
オペレーションの複雑さ
電子カルテ利用時には情報漏洩のリスクに備えるために、ウイルス対策ソフトの導入や、認証システムがある製品を導入するなど、十分なセキュリティ対策が必要です。
実際に、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)により電子カルテデータなどが閲覧不能となり、医療機関としての機能が停止に追い込まれた例もあります。
デジタル技術に習熟していない医療従事者にとっては、これらのセキュリティ上の懸念が大きな心理的負担となり、導入をためらう原因のひとつとなっています。
導入時にはスタッフ全員に対して情報リテラシーの教育を行うなど、セキュリティ意識を高めることが求められます。
電子カルテ導入のメリット
電子カルテには、従来の紙カルテでは得られない多くのメリットがあります。
ここからは、そんな電子カルテのメリットをご紹介します。
電子カルテのメリットを知ることで、導入へ向けた一歩を踏み出せるかもしれません。
診療効率の向上
電子カルテを導入することで、患者の情報を必要なタイミングで瞬時に検索・更新することが可能となり、診療をよりスムーズに行うことが可能となります。
また、処方箋や検査依頼書の作成時には、電子カルテシステムに備わるテンプレートやユーザー辞書といった便利な入力補助機能を活用することで作業効率化が図れます。
医療スタッフ一人ひとりに今よりも余裕ができることで、人手不足が深刻化している医療業界においても、患者に寄り添った医療サービスを提供できるようになります。
患者の待ち時間短縮にも効果的です。
患者データ管理の効率化
電子カルテでは、患者の病歴や検査結果、投薬履歴などのデータを一元管理することができます。
特に、
紙のカルテでは複数の書類から目的の書類を探し出す手間がかかりますが、電子カルテでは、検索機能を使って迅速に必要な情報を取り出すことができるうえに、医師や看護師、事務員が同時に同じカルテを確認することも可能です。
増え続ける大量のデータは全てシステム上に納めることができるため、保管スペースを管理する手間を省けます。
院内連携の強化
電子カルテを使えば、医療機関全体がひとつのチームとして一貫した医療を提供できるようになり、より質の高い医療サービスの提供が可能です。
例えば、担当医師や看護師が変わるたびに何度も同じ事を説明・確認するのでは非常に効率が悪いです。
電子カルテを活用すれば複数の医師や看護師、薬剤師などが同一の患者情報をリアルタイムで共有できるため、スムーズに他の医師へ担当を引き継ぐ事も可能となります。
院内の他システム(例:レセプトコンピューター等)と他システムと連携できる電子カルテを導入すれば、患者データを各システムへ正確に反映させる事も可能です。
電子カルテ選定のポイント
電子カルテ選定時のポイントについて、下記2つの項目に分けて解説します。
・適切なシステムの選定方法
・導入費用・運営費用の目安
適切なシステムの選定方法
電子カルテシステムを選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。
① 医療機関の規模・診療科目に合っているか
医療機関の規模・診療科目ごとのニーズに対応したシステムを選ぶことが重要です。
求められる機能やシステムの規模が大きく異なります。
② 使いやすさ・操作性
システムのユーザーインターフェース(UI)が直感的で、使いやすさに配慮されているものがおすすめです。
③ 他システムとの連携性能
他の医療システム(検査機器、レセプトコンピューターなど)と適切に連携できるかは、診療効率を向上させるための大きな要素となるためとても重要です。
また、システムが将来的に新たな医療機器と連携できるか、拡張性の有無についても確認しましょう。
④ トラブル発生時の対応
停電発生時やネットワークに障害が発生した際などに、どのような対応をしてもらうことができるのか、事前に確認しましょう。
連絡先や対応可能な時間帯についても確認が必要です。
導入費用、運営費用の目安
電子カルテの導入には、以下の費用が必要となります。
導入費用は数百万円から数千万円程度かかるのが一般的です。
・初期導入費用(ハードウェア、ソフトウェア、インストール費用)
・カスタマイズ費用(特定の機能を追加する場合)
・トレーニング費用(スタッフ教育用の研修など)
規模の小さい診療所であれば比較的低コストですむ場合もありますが、大規模な病院や高度なカスタマイズが求められる場合は、より高額になることもあります。
さらに、電子カルテを運営するにあたり、以下の維持費用が必要となります。
維持コストの目安は、月々数万円から数十万円程度となります。
・月々の利用料金(クラウド型システムの場合、サブスクリプション費用)
・システム保守費用(アップデートや障害対応など)
・バックアップやデータストレージ費用
・セキュリティ対策(ウイルス対策やセキュリティ監視)
電子カルテを検討する際は、必ず導入前に見積もりを取りましょう。
初期導入費用や運用費用が予算内であることは重要ですが、それに加えて、システム導入による業務効率の向上や患者ケアの質改善といった具体的な効果(費用対効果)も十分に考慮することが大切です。
まとめ
令和5年時点での電子カルテの普及率は、医療機関全体の約半数程度に留まっています。
普及率は年々上昇してはいますが、現在の伸び率では政府の目標とする「2030年までに全ての医療機関への導入」を実現するのは難しい状況です。
特に200床未満の一般病院や診療所では、導入コストや運用の複雑さへの懸念から電子カルテ導入の障壁が高く、普及率は60%未満にとどまっています。
今後はこれらの課題をどのように解決し、普及を加速させるかが大きなテーマといえます。
未来の医療体制を支えるためには、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現が不可欠です。
そのためにもまずは、電子カルテの導入に対する必要性を広く理解してもらうことが重要です。
業務の効率化や医療の質向上など電子カルテのメリットを、医療機関全体でしっかりと理解することが普及促進の鍵と考えられます。
持続可能な医療体制の構築に向けて、今こそ電子カルテの導入を前向きに検討してみましょう。