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2024.12.24

電子カルテSOAPとは?記載方法・注意点を徹底解説!

SOAP(ソープ)とは、電子カルテをはじめとした医療・看護記録を作成する際の記入形式のひとつです。
SOAPでは、4つの項目に分けて情報を整理しながらカルテを作成します。

SOAPの考えに則ってカルテを作成することで、患者が抱える問題や治療のプロセスを明確化し、医療チーム全体で情報の共有がしやすくなるというメリットがあります。

本記事では、SOAPを記載する際の注意点や記載方法などを例文付きで徹底紹介します。
医療記録の質を高めたいと思っている方、必見です!

SOAPとは何か

SOAP(ソープ)とは、医療・看護記録(カルテ)の記入形式のひとつで、医療の現場において広く採用されています。
SOAPでは以下4つの項目に分けて、順に情報を整理しながらカルテを作成していきます。

  1. S(subjective):主観的情報
  2. O(objective): 客観的情報
  3. A(assessment): 評価
  4. P(plan): 計画(治療)

SOAPの考えに沿ってカルテを作成することで、患者が抱える問題や治療のプロセスを明確にすることができます。

Subjective:主観的情報とは

1)S(subjective)では、主に患者自身からの訴えや自覚症状、既往歴を記録します。

「昨日から頭が痛くて吐き気がする。」「熱があって息が苦しい。」などの直接的な訴えに加えて、会話の中で得られた些細な情報も、漏れなく記録することが大切です。

例)いつも朝食を抜いている・スポーツが趣味 など

また、患者本人以外にも家族や介護職員など患者の周囲から得られた情報も「S」に含みます。
患者本人との意思疎通が難しい場合には、特に有益な情報となるためこちらも詳細に記録することが重要です。

Objective:客観的情報とは

2)O(objective)では、患者からの訴え「S(主観的情報)」をもとに医師の診察や検査を行い、そこで得られた情報を記録します。

例)
・聴診・触診・視診・内診などの所見
・血液検査の結果
・画像検査の結果 など

この情報は診断を下すための重要な「根拠」となるため、必要な情報を漏れなく記録することが求められます。
特に身体所見については、他の医師やコメディカルスタッフにも明確に伝わるよう、わかりやすい記録を心がける必要があります。

Assessment:評価とは

3)A(assessment)は、「S(主観的情報)」と「O(客観的情報)」の情報に基づき、医師が分析・考察をして導いた評価です。

可能な範囲で除外診断も記載します。
考察するにあたり、評価に対して主観を入れてはいけません。

例)
「S」目がかゆい・涙と鼻水が止まらない
O」花粉の皮膚テスト/アレルゲン特異的IgE抗体検査の結果:高い数値
A」花粉症の可能性が高い

このように、診察や検査結果から患者の状態を総合的に判断することがA(評価)に当たり、客観的かつ適切な分析と判断が求められます。

Plan:計画とは

4)P(plan)では、「A(評価)」で下した評価に対して、症状の治癒や怪我の回復のために今後どのような治療・経過観察・生活指導を行うかといった治療方針・看護計画を記録します。

また、治療方針だけでなく、何を目指して治療を行うか(症状の改善、予後の確認など)を記載することが重要です。

治療方針・看護計画が明確に記されていることで、担当スタッフが変わるような場合であっても治療の一貫性が保たれます。

SOAPの具体的な記載方法

SOAPを使ったカルテの記載方法を、「風邪症状を訴える患者」を例にご紹介します。

主観的情報の書き方

S」=主観的情報は、患者が自分で感じている症状や体調に関する情報です。

《書き方例》
3日前から喉の痛みと鼻水が出始め、昨日から咳が出始めた。
今日になって発熱があり、体がだるい。
喉の痛みと咳は夜間に悪化する。

既往歴: 特になし
服薬歴: 現在の服薬なし

客観的情報の書き方

O」=客観的情報には、聴診、触診、視診、内診などの所見や検査の結果をそのまま記します。

《書き方例》
体温:38.5℃(発熱)
血圧:120/80 mmHg(正常範囲)
呼吸数:18/分(安定)
喉:明らかな赤みおよび軽度の腫脹が確認され、軽度の鼻水分泌物を伴う。

評価の書き方

A」=評価は、患者の症状に基づいて診断を下す部分です。
可能性のある疾患を挙げ、現時点での考えを述べます。
また、記入者の主観を入れないことが基本とされています。

《書き方例》
急性上気道感染症(風邪)の疑いが強い。
患者の症状(喉の痛み、発熱、鼻水)からウイルス性の感染が考えられる。
インフルエンザなどの可能性も排除できないが、現時点では典型的な風邪の症状が優勢。

計画の書き方

P」=計画には、今後の治療方針や指示を記載します。

《書き方例》
・発熱および症状緩和のため、アセトアミノフェン500mg13回処方。
・体温が38度を超える場合は、追加の解熱を推奨。
7日以内に症状が改善しない、または悪化した場合は再診を指示。(必要に応じてインフルエンザや細菌感染症の検査を実施)
・患者に十分な水分補給と安静を勧め、喉の痛みを軽減するためのうがいや吸入を提案。

SOAPのメリットとデメリット

SOAPを活用するにあたってどのようなメリットがあるのか?また、デメリットはあるのか?解説します。

SOAPのメリット

1)患者情報の整理がしやすくなる
4つの項目に沿って情報を分類することで、患者情報をわかりやすく整理できます。
多くの情報に埋もれて重要事項を見落としてしまう、といったリスクを軽減することができます。

2)一貫した医療の提供が可能となる
SOAPは記入者以外にも、患者の状態や考察の流れが伝わりやすい記録方法です。
そのため担当者が変更された場合であっても一貫した医療の提供が可能です。

SOAPのデメリット

1)長期的なケアには不向き
SOAPは基本的にひとつの問題に対しての対策を記録する形式です。
そのため複数の症状がある場合や、長期的なケアが必要な患者の場合は、SOAPの記載方法では全ての情報を網羅しきれません。

記録する情報が複雑になればなるほどかえって重要な情報を見逃すリスクが高まってしまうため注意が必要です。

2)記載に時間がかかる
SOAPの記載方法は緊急時には適していません。
SOAPの考えに則ってまとめるには、考察が必要であり、ただそのまま得た情報を記載するよりも時間が必要となるからです。
カルテを記載する際にはSOAPだけにこだわるのではなく、状況に応じて臨機応変に対応することが求められます。

SOAPを記載する際の注意点

SOAPはどのように記載すればそのメリットをより引き出せるのか?
記載する際の注意点についてまとめました。

情報を簡潔かつ正確に記載する

SOAP記録は簡潔かつ正確に情報を記載することがとても重要です。
各項目に関連しない情報や、医師による主観的な表現を記載してしまうと、真に重要な情報を見落とす原因となってしまいます。

1
主観的:上肢の屈曲・伸展運動は正常範囲内で行える
客観的:上肢の屈曲・伸展運動はから○○°まで、正常な範囲内で動かせる。

2
主観的:緊張しているようだ
客観的:唇を噛みしめている、視線が落ち着かない

上記のように数値や具体的な観察結果を示すことで、医療チーム全体で正しく情報を共有でき、適切な対処を行うことができます。

評価と計画の考察を詳細に記載する

SOAP記録では、「A」評価と「P」計画の考察を詳細に記載することが求められます。
治療の意図や根拠を明確にすることで、後に診療を行う別の医師にもどのようなプロセスで現在の状態に至ったのかが理解しやすくなります。

記録の整合性が保たれることで、万が一の医療過誤防止にもつながります。

記録の修正・更新は適切な方法で

患者の容態の急変や治療計画に変更があった際には、一度作成したSOAP記録を状況の変化に応じて修正・更新する必要がありますが、その際は適切な方法で行うようにしましょう。

適切な方法とは、変更前と変更後、両方の情報を確認できるようにするということです。

紙カルテ・電子カルテのどちらであっても記録をそのまま削除してしまうと「データの改ざん」と判断される恐れがあるため注意しましょう。

変更箇所を明確にすることで情報の整合性が保たれ、後からの確認や検証をスムーズに行うことができます。

関連記事:「電子カルテの三原則について詳しく解説」

SOAP記載の具体例

SOAPに基づいて電子カルテを作成する際どのような形式になるのか、2つの例をご紹介します。

記載例1:初診時のケース

S
2日前から熱・喉の痛み・咳が出始めた。
熱は昨日38.8℃まで上昇し、今も続いている。
強い倦怠感と呼吸困難感がある。
既往歴はなし、喫煙歴なし。
同居する家族が1週間前に発熱していた。(現在は回復している)

O
バイタルサイン:体温 38.0℃、脈拍 95/分、呼吸数 20/分、血圧 128/82 mmHg、酸素飽和度 96%(室内気)
呼吸音:両側肺野に微細なラ音を認めるが、喘鳴はなし。
咳:乾いた咳が頻回に見られ、喉の奥での痛みを訴える。
血液検査:白血球数 6,500/μLCRP 8.2 mg/dL(軽度上昇)。
PCR検査:COVID-19陽性(検査結果)。

A
COVID-19陽性の診断が確定。
軽度の呼吸困難感と乾いた咳が続いていることから、軽症と評価するが、症状が悪化する可能性を考慮し、経過観察が必要。
酸素飽和度は現時点では問題なし、呼吸状態のモニタリングを継続。

P
解熱剤(アセトアミノフェン 500mg)を処方し、症状の緩和を図る。
水分補給の指導を行い、食事が取れない場合は補助的な栄養摂取を提案。
呼吸困難感が悪化した場合、酸素投与を考慮。
定期的にバイタルサインを測定し、呼吸状態の悪化に注意。
追加で検査(胸部X線)を検討し、必要に応じてCTスキャンを依頼。
家族への感染拡大を防ぐため、感染予防の徹底を指導。
症状が続く場合は再診を勧める。

記載例2:経過観察のケース(がん患者を想定)

S
治療後の体調は少し戻ってきたが、まだ疲れやすい。
最近、食欲が落ちてきているが、吐き気は軽減した。
放射線治療後に皮膚のかゆみが増したことが気になる。

既往歴に乳がんあり、現在は化学療法終了後の経過観察中。

O
バイタルサイン:体温 36.6℃、脈拍 84/分、呼吸数 16/分、血圧 120/75 mmHg、酸素飽和度 97%(室内気)
身体所見:放射線治療を受けた胸部に、軽度の紅斑と乾燥が見られ、触診で圧痛を確認。
血液検査:白血球数 3,200/μL(少し低め)、ヘモグロビン 10.5 g/dL(軽度貧血)、CRP 1.5 mg/dL(正常範囲)。
胸部CT:腫瘍の縮小が見られ、治療の効果が認められる。転移なし。
体重:2週間で2kg減少。

A
現在、化学療法後の経過観察中であり、腫瘍の縮小が確認されているため、治療は効果的に進行していると評価できます。
疲労感と食欲不振は治療後の副作用と考えられ、引き続き経過観察が必要です。
また、放射線治療後の皮膚のかゆみは軽度であり、治療の影響として管理可能。
軽度の貧血も見られ、食欲不振が続くことから栄養面でのサポートが必要です。

P
放射線治療後の皮膚ケアとして、保湿剤の使用を指導。
かゆみが悪化する前に、抗ヒスタミン薬を投与することを提案。
栄養サポートとして、高カロリー・高タンパクの食事を勧め、食欲が戻らない場合は栄養補助食品を提案。
体重減少が進まないように注意深く観察する。
貧血の管理として、鉄分やビタミンB群のサプリメントを提案し、定期的な血液検査で貧血状態をフォローアップ。
次回の胸部CTで再評価を行い、腫瘍の進行を確認。
患者様には体調に変化があった場合に早期に報告するよう、再度指導。
精神的なサポートも重要なため、心理的な負担がある場合は、カウンセリングサービスを利用するよう勧める。

まとめ

SOAP(ソープ)とは、医療・看護記録(カルテ)の記入形式のひとつです。

Ssubjective):主観的情報
Oobjective): 客観的情報
Aassessment): 評価
Pplan): 計画(治療)

これら4つの項目順に情報を整理してカルテ作成を行うことで、患者が抱える問題や治療のプロセスを明確化できます。

医療や介護の現場では、さまざまな職種が連携して患者のケアを行います。
SOAPを共通のツールとして活用することで職種間の情報共有が円滑になり、質の高い医療の提供が可能となります。

SOAPに則ってカルテを作成するには「考察」が必要であり、初めは少し難しく感じるかもしれません。
しかし、慣れてくるとその利便性を強く実感できるはずです。
まずは基本的な記録方法を身に付け、少しずつ実践していくことが大切です。

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